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第二章


 大学では、別の研究グループが人工冬眠の研究を行っていて、そのための冬眠カプセルが完成をみていた。あくまで試作機ではあったが、等身大のGならなんとか収められる大きさだった。

 そこでひとまず、このカプセルに入れることにした。
 冬眠さえさせておけば、格別な隔離施設は不要と思われたので、しばらく大学へ置くことになった。

 翌日の新聞・テレビは、この話題で持ちきりだった。
 当然、飛田製薬の大源寺と門脇もこのことを知った。実はこのGをクローニング技術により誕生させたのが門脇であり、その資金を出したのが大源寺なのだった。

 彼等は前回Gが東京を襲った時、自衛隊の攻撃によって飛散したGの断片を集め、これをクローニングにより育てていたのだった。
 彼等は、最初に成長させた四つの幼体は、全てあの事故の時に焼滅したと思っていたのだ。
 大源寺は、もちろんこのGを奪い返すべく、行動に出た。

 彼は、配下の荒事専門の要員達を、大学に向かわせた。
 その夜、要員達は警備の警察官二人を殴り倒し、冬眠カプセルを奪ってトラックで逃げようとした。
 その時、気がついた警官が本署に連絡し、深夜のカーチェイスが始まった。

 丁度その頃、東京湾を航行する船が、次々と海面下を進む何ものかを目撃していた。それは一路、東京湾の奥、芝浦あたりを目指していた。

 パトカーはトラックを埋め立て地に追い込んだ。万一冬眠からさめて暴れても、なるたけ被害を出さないため、人のいないところの方がよいからだ。
 と思ったのは大源寺側の作戦で、彼等はヘリコプターを用意し、カプセルを釣り上げて逃げようとしていたのだった。

 カプセルが地面を離れようとした時、警察が追いついた。彼等は一斉に発砲した。
 美香と英二、それに英二の兄の自衛隊幕僚幹部の殿村国夫が、やや遅れて着いた。
 発砲を見て、美香が叫んだ。
「カプセルを撃たないで。冷凍中に傷つけることは致命傷になるの」

 その声で、指揮官は発砲を止めさせた。
 が、運悪く、ちょうど最後の発砲がウインチを直撃し、地上から10メートルくらい離れていたカプセルは、一気に地上へと激突した。

 カプセルが大破した。もちろん、中のGも重傷を負った。が、それでもまだ生きていた。
 落下のショックで冷凍状態が解除されるとともに全身から血が吹出し、Gは悲痛な叫びをあげた。

 それに応えるように、大きな声が上がった。親Gが海から姿を現したのだ。
 人々は一斉に逃げまどった。
 親Gはぐったりした子Gを抱えると、一声叫び、その場にうずくまった。

 親Gが埋め立て地に居座って、二日が過ぎた。
 親Gは子Gが重傷を負っているために動けず、取りあえず回復するのを待っているという様子だった。

 自衛隊は、G現るの報を聞いてすぐさま行動に出て親Gを包囲し、さらに警察も機動隊を出動させたが、親Gが動かない以上、手の打ちようがなかった。
 勿論、こちらから手を出して下手に刺激するようなまねは許されなかった。膠着状態が続いた。

 国夫は動かぬ親Gを横目で見ながら、別の行動に出ていた。
 彼は、自衛隊が現在開発中の瞬間冷凍剤を詰めたミサイルを、千葉県印旗沼の周辺に配備させていた。
 これは、本来海上自衛隊が海峡や港湾を封鎖するために、秘密裏に開発していたもので、これを使えば親Gを沼ごと冷凍できると考えたからだ。
 勿論これは美香が叫んだ「冷凍中の傷は致命傷になる」ということを国夫が聞いて、閃いたアイデアだった。

 ここで問題となるのは、親Gをどうやって印旗沼まで誘い出すかだった。
 子Gを餌にするというのが最も近道のようではあったが、親がしっかり抱えているので望みはなかった。

 では、他に子Gがいる可能性はないか。
 国夫の頭には、弟の英二が彼に語った飛田製薬の話が蘇っていた。
 英二は、今親Gが抱えている子Gは、飛田製薬が生み出したに違いないと確信していること、それに他にも子Gがいる可能性が高いことを話していた。

 現に、事故現場には幼体Gとみられる焼死体があったし、クローニングの技術を持ってすれば、無限ともいえるコピーが作れるからだ。
 事故現場、遺伝子学者の門脇、更には飛田のバイオテクノロジ技術。材料はそろっていた。

 国夫も、他の子Gの存在は信じていた。
 いやむしろ、いてくれなくては困るといった方がいいかもしれない。それ以外に、親Gを思い通りに動かすことは不可能だからだ。

 先の事故を起こしたトラックが本社から出発したらしいこと、本社ビルのある辺りは夜になると人がほとんどいなくなるため、夜間に作業を行うぶんには意外に人目につかないことなど、子Gがいる可能性は十分あった。

 それにもし子Gがいなくても、手がかり位は掴めるだろうとの読みもあった。
 国夫は素早く、自衛隊の特殊コマンド部隊を飛田製薬本社ビルに送り込む決断をした。


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