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第四章


 一方、警察もただ手を拱いていた訳ではなかった。
 当然、子Gと飛田製薬の事故を結び付けて考えた人間がいた。有田である。
 しかし警察は、法律を無視して行動する訳にはいかないという性格上、どうしてもいろいろな手続きを踏まねばならず、行動が遅れがちになってしまうのだった。

 有田が家宅捜索令状を持って飛田製薬に向かったのは、夜の11時頃。親Gが埋め立て地を動き始めたころだった。
 有田には、教授と美香が従った。そこに実験設備があれば、それを鑑定してもらうつもりなのだった。ちなみに有田は美香のことを、英二を通じて良く知っていた。

 有田は飛田の本社ビルの守衛所で令状を見せ、ロビーへと進んだ。
 彼はそこで一人の男がうずくまっているのをみつけた。抱き起こしてみると、それは英二だった。

 英二は黒づくめの男に地下からこのロビーにまで運ばれて、そこで応急手当てを施され、そして置き去りにされたのだった。
 安全が確認されたため、教授と美香もロビーに入り、彼等はそこで英二から、地下にGのクローニング工場があることをはじめ、それまでの経緯を聞かされた。

 英二たちのところへ煙が流れてきた。エレベータシャフトを通して地下から流れてきているのだった。かなり火災が拡がっているようだった。

 有田をはじめとする警察官たちが、エレベータシャフトから地下へ降りる準備をしているとき、遠くから地鳴りのようなものが伝わってきた。
 親Gが、誕生したばかりの幼体に引かれて近づいてきているのだった。

 有田、英二、教授、美香それに警官たちは、ひとまずここを撤収することに決め、外へ出た。
 出たところで、丁度親Gと鉢合わせするような格好になってしまった。幼体の存在が、親Gを恐るべきスピードでこのビルに一直線に向かわせていたのだった。

 Gに踏みつぶされたビルの瓦礫が山積みになって、一同が車で逃げることは無理だった。
 親Gが英二たちを認め、放射能を吐きかけようとして、直前で止めた。見ると、親Gの手の中で動くものがあった。
 子Gが美香の姿を見つけて、必死になって親を止めたのだった。

 子Gは美香に向かって手を挙げ、そしてその手が力無く垂れ下がった。
 子Gが死んだのだった。
 美香の目に涙がこみあげてきた。

 Gといえども暖かく接してやれば、ちゃんとそれを覚えているのだ。
 Gをあそこまで凶暴にしてしまったのは、人間なのだ、と美香は呟いた。

 親Gの放った咆哮は、ひときわ悲痛な響きを含んでいた。
 遠くから、ヘリコプタの音が近づいてきた。
 親Gがその音の方を向くと、一声叫んだ。
 英二たちもヘリの方を見た。ヘリはなにか小さなゴンドラを釣り下げているようだった。

 ヘリは親Gの周りを回り始めた。
「あれは幼体Gだ」英二が叫んだ。
 それは、あの黒ずくめの男たちが連れ去った、生まれたばかりの幼体Gだった。

 英二は理解した。彼等はやはり、自衛隊コマンド部隊だったのだ。
 彼を担いで助け出してくれた人物に、どうも以前会ったような気がしていたのは、それが兄の部下である、貝原秀明だったからだ。
 が、今はそんなことはどうでもよかった。

 自衛隊が幼体Gを餌に、親Gを動かそうとしているのは理解できた。
 しかし、仮に日本を遠く離れたところまで連れて行ったとしても、一時しのぎにしかならないではないか。
 彼には自衛隊の真意が分からなかった。

 そんな英二の思惑をよそに、ヘリが親Gから離れた。
 勿論親Gは、その後を追うように動き始めた。しっかりと子Gを抱きかかえながら。
 ヘリは慎重に親Gが歩いてきた道を逆に辿っていった。被害をこれ以上大きくしないように、との配慮からだった。

 ヘリはいったん東京タワーへ出て東へ移動し、江戸川を遡って(復元時の注:これだと橋を片っ端から壊していくことになるので、得策ではないですね。道路を使った方がいいかも。)印旛沼へと向かった。
 親Gが忠実に後を追う。

 親Gが沼に現れた。
 ヘリは親が沼の真ん中まで入ってくるのを確認して、ゴンドラを切り離した。
 親Gがキャッチした。

 そのとき、冷凍剤を詰めたミサイルが一斉に撃ち込まれ、同時に放水が開始された。
これはGsの冷凍化を早めるためである。
 やがてGsはカチカチに凍ってしまった。

 続いて通常のミサイルが撃ち込まれた。
 完全に凍ったGsはついに崩れ始め、やがて粉々になってしまった。
 ついに人間がGを倒したのだった。


(復元時の注:以下は、エンドロールが終わった後の方がいいかも。)

 飛田製薬の地下。
 火も収まった実験室の中に、門脇の死体があった。
 しかし彼はコマンドが去った後、死の直前に最後の力を振り絞って、残った最後の幼体Gの入ったシリンダを下水に流したのだった。

 シリンダは排水路から川へ流れ、やがて海へ出た。
 タイマーにより、シリンダの蓋が開いた。
 中の幼体が、海の中を彼方へと消えていった。
 夕日が差し込む、美しい海へ。

−完−


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