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第三章


 飛田製薬の本社に乗り込むという考えは、英二の方が一足早く思いついていた。
 もっとも彼の場合は子Gが目的ではなく、Gのコピーを作るなどといった悪魔の技を白日の元にさらし、その背後にいる大源寺を告発することにあった。
 英二は、自衛隊のコマンド部隊より一日早く、飛田の本社に潜入を果たしていた。

 彼は夕方、本社ビルへの客に成り済まして入るとトイレに潜み、夜になって人気がなくなったころ、四台あるエレベータの内の一台に乗り込んで、そのまま天井裏に上がった。
 彼は実験設備が地下にあるとにらみ、そこへ降りていくためのエレベータが必ずあると考えたからだった。

 エレベータシャフトの構造を見ると、彼の思惑通り、一台のエレベータが表向きの最下階よりさらに下へ降りられることがわかった。彼はそのエレベータに乗り移り、チャンスを待った。

 深夜になった。
 彼の載ったエレベータが地下深くに降りはじめた。
 彼は、天井の点検口の隙間から、中の人間が降りるのを見届けてから下へ降り、さらに外へ出た。

 エレベータホールからは、長い廊下が続いていた。彼は注意深く歩いていった。
 しかし、このとき既に飛田側の監視用テレビカメラは彼の姿を捉えられていて、彼が廊下の突き当たりにあった厚そうな扉の前でどうしようか考えていたとき、飛田側の保安係員に取り押さえられてしまった。

 英二は、物置きのようなところに放り込まれていたが、半日ほど過ぎたところで引き出され、一つの部屋に連れ込まれた。
 そこは、実験設備がずらりと並んだかなり広い部屋で、大源寺と門脇、それに数人の研究員が忙しそうに動いていた。

 研究員達は、十個ほどならんだシリンダの中に入った何かに対して、いろいろな操作を施しているようだった。
 良く見ると、その何かというのがGの幼体だった。

 Gのクローニングは大源寺と門脇の仕業だったことを、彼は事実として知ったのだった。
 大源寺は英二に、どうせ死ぬのだからと、なぜGのクローニングしているのかを話しはじめた。


(復元時の注:この部分、なぜかページが欠落しています。いや、マジで(^^;)。別紙メモによると「不老不死を手に入れるため」となっていました。多分、その趣旨でまとめたはずです。)


 自律的に動き始めた四体の幼体Gが、シリンダから引き上げられたとき、非常ベルの音が鳴り渡った。
 殺気立った雰囲気の中、銃声、さらに爆発音が断続的に聞こえてきた。
 飛田側も応戦しているようだが、次々と悲鳴を上げて倒れていくのは飛田側の保安員のようだった。

 事態が良くのみこめず、呆然と立ち尽くす大源寺、門脇、それに英二の前に、全身黒ずくめで、手に自動小銃を持った一群の男達が現れた。
 彼等はみな、がっしりした体つきで動きに無駄がなく、銃器の扱いにも手慣れていた。明らかにプロの集団であった。

 彼等こそ、国夫が送り込んだコマンド部隊だった。ここでも撃ち合いが始まり、実験設備が次々破壊されていった。
 コマンドの方も無駄な殺しはしないよう命令されていたらしく、抵抗を示さないものには発砲しなかったが、運悪く流れ弾が英二の肩に当たり、英二はその場に倒れた。

 かすむ意識の中で、英二は男達が生まれたばかりの四体の幼体を、カプセルに収めて立ち去っていくのをみていた。
 英二の目の隅で赤い光がパッと散った。実験室に火の手が上がったのだ。
 逃げなければ、と英二はおぼろげな意識の中でそう思った。が、いかんせん体が動かなかった。

 火は見る見るうちに拡がって、英二に襲いかかろうとしていた。
 もうだめだと思いかけたとき、最後まで残っていた男が英二の方によってくると、彼を肩に担ぎ上げた。
 助かったという安堵の気持ちから、彼はすーっと意識を失っていった。

 埋め立て地の親Gが顔を上げた。何か異変に気がついたようだった。
 それに応えるように、親Gの中の子Gも体を起こした。
 子Gは、出血は止まったものの、依然重体に変わりなかった。
 もともとクローニング技術によって実験室で生まれた体である。親Gほどの生命力の強さは、まだないように見えた。

 親Gが立ち上がり、一声叫んだ。
 辺りを固め、それまでは手持ち無沙汰気味でさえあった自衛隊と警察に、さっと緊張の色が走った。
 親Gが歩き出した。めざすは都心の東京タワー方向。

 これを、親Gから500メートルほど離れた対策本部の中から見ていた国夫は、作戦の第一段階が成功したのだと直感した。
 その直後、幼体Gの奪取に成功したとの電文が、国夫の手許に届いたのだった。


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